人気漫画家・こうの史代原作の『この世界の片隅に』の劇場版が、11月12日に公開。
同作品は、能年玲奈こと「のん」が声優と務めるアニメ作品としても注目されている。

内容としては「戦争もの」だ。太平洋戦争の中、日本最大の軍港であった広島県・呉に嫁いできた少女「すず」の日常を、鮮やかな色彩と柔らかな描写で繊細に描く作品である。

■アニメ・特撮の大当たり年のフィニッシュ『この世界の片隅に』

Zwischenablage12今年のアニメは豊作だ。『君の名は。』と『聲の形』がスマッシュヒットを果たした。庵野秀明の『シン・ゴジラ』とも合わせて、アニメ・特撮の年といっても過言ではない――。

そんな豊作の2016年のフィニッシュに登場したのが、『この世界の片隅に』である。
「あまちゃん」で一世風靡した能年玲奈が「のん」と芸名を改めて、主演女優としてスクリーンに戻ってきた! あまちゃん以来、これほど「のん」がハマった作品もない。
ヒロイン「すず」と「のん」のリンク度は、120%超え。それだけで、見るしかないのだ。

――ヒロイン・すずは、絵を描くことが好きな、のんびりとした性格の少女。幼い頃には妖怪が見えたりもして、どこか神秘的な女の子でもある(これも「のん」とハマりすぎ)。
あるきっかけがあって19歳で呉に嫁いでくるのだが、彼女はまるで、少女のような性格のまま。戦況が悪化する中でも、明るく元気に生きる。食料がなくなれば、みそ汁に菫の花も入れる――。小柄で猫背、まるっこいすずと、のんの声がこの上なく一致しているのだ。

さらに今作は、『君の名は。』でも注目が集まったその土地々々の「方言」も可愛い。
「ありゃあ」
「弱ったねえ」
「バレとりましたか」
などなどの広島弁が絶妙だ。そして今作の片淵監督は、まさしくのんの話し方をイメージしながら制作を進めていたという。それはその他スタッフも同じだったというから驚き。

アフレコの際には、特殊なマイクを使ってのんの“息遣い”まで録音し、その台詞に合わせて絵柄を変えた部分さえあると言う。ハマり役になるのは、ある意味で当然なのだ。

アニメ評論家の藤津亮太氏は、こう語る。
「すずさんを実写化する、というこの映画のミッションのおいて、のんは最後のピース」

■極細部にまで至るこだわりとテーマの秀逸さ

Zwischenablage13『この世界の片隅に』で素晴らしいのは、何より、キャラクターたちのちょっとした芝居にまで神経が通っているところではないだろうか。キャラデザと作監を務めた松原秀典氏は、依頼を受けたときの印象として、『作画に二年半は必要だと思った』と語っている。

アニメの作画で一番難しいのは、「日常芝居」なのだそうだ。ちょっとした表情や身体の動きを細密に描写することが、何よりも手間がかかると言う。
それも『この世界の片隅に』では、あえてフレームの中に常にキャラの全身を入れてアクションさせるという手法が目立つ。これは素人が想像するだけでも大いなる「手間」だ。

しかし、ふとした男女のシーンから濃厚な「香り」が漂うのは、このような労をあえて取ったスタッフたちの執着ゆえだろう。さらに制作陣のこだわりは極細部にまで及ぶ――。

戦争を扱う作品である以上、重要なのは「時代考証」だ。
制作陣は入念なリサーチで、当時の呉の街並みを再現した。背景のディテールを徹底的に突き詰めることで、キャラの実在感を引き立たせている。スタッフたちは心から戦時中の気分になるために、当時食べられていた食事を再現して、自分たちで食べたとも言う。
こうなるともはやアニメを超えて、これはスタッフまで巻き込んだドキュメンタリーだ。

おそらく、「戦争映画」に対して苦手意識を持つ人は、とりわけ若い人には少なくないだろう。『君の名は。』も『聲の形』もある程度重いテーマを扱ってはいるが、過去に実在した戦争よりは悲惨ではない。歴史の重みが、そのまま作品の雰囲気になるのは致し方ない。

しかし、『この世界の片隅で』で描かれるのは、あくまで戦争を背景にした、すずという少女の「個」である。けな気に、必死に日常を生きる姿は、豊かな時代を苦しんで生きる現代人の影とも重なる。我々は「平和」という戦争の中に置かれても過言ではないだろう。
あくまでテーマは、「日常」――2016年の私たちとの世界とも地続きの「日々」なのだ。

■絶対に「最後まで席を立たない」こと

エンディングクレジットの最後の最後まで、『この世界の片隅に』は目を凝らそう。
コトリンゴのエンディングテーマ「たんぽぽ」を聴きながら、余韻を味わい尽くすべきだ。

「生きるというだけで、涙があふれてくる」と語ったのは、のん本人である。その言葉を反芻しながらエンディングクレジットを見つめていると、涙を堪えることは難しい――。

この記事にネット上の反応は

3 噂の名無しさん
評判いいよな。観に行こうかな。
12 噂の名無しさん
すずが三葉ちゃんより可愛いかどうかってことだけです。
20 噂の名無しさん
新海誠「ぐぬぬ」
24 噂の名無しさん
見てきたけど『君の名は。』なんかよりずっといいよ。
26 噂の名無しさん
>>24 その比較がそもそもおかしいんだよな。パヤオ作品と比べてどうかだよ